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プラムディヤの「人間の大地」 インドネシア文学の最高峰

インドネシア文学者のプラムディヤ・アナンタ・トゥール氏をご存じだろうか。ノーベル文学賞受賞候補者に何度も名が挙がったインドネシアを代表する文学者で、その代表作「人間の大地」は最高峰といっても差し支えなく、その作品群はインドネシアの文学史に大きな金字塔を打ち立てた、知らぬインドネシア人のいない人物である。

1925年中部ジャワ州ブロラに生まれ、1965年の930事件で所属していた文学組織が共産党との関係を疑われて流刑地ブル島に約10年間抑留さえ、その間に世紀の大作の大半を著した。

「人間の大地」は正確には「ゲリラの家族」「人間の大地(上下)」「すべての民族の子(上下)」「足跡」「ガラスの家」の7部から成るもので、オランダ植民地時代のインドネシア人若者が民族意識に目覚め独立運動に立ち上がる物語であり、スハルト政権は「危険思想」として発禁処分にした経緯がある。

1990年代、ジャカルタに赴任する日本のマスコミ特派員や外務省のインドネシア語専門官らにとってプラムディヤ著作(押川典昭訳、めこん出版)は間違いなく「必読書」だった。大作故に読了に時間がかかるのは必定だが、短時間に数ページずつでもページを繰って名作に触れて、ぜひともインドネシア理解の一助としてほしい。

諸氏よプラムディヤを読まずしてインドネシアを語るべからずである、かなり大袈裟ではあるが。それほどの価値がある名著だ。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。