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忘れまじ、テロの悲劇 インドネシア 10月12日はバリ・テロから20年

10月12日は、世界を震撼させたバリ島での爆弾テロ事件から20周年の節目に当たり、テロの現場近くに建立された慰霊碑の前で追悼集会が開催された。

南部のクタにあったディスコ(サリクラブ)前の路上に駐車していた車が爆発し、外国人観光客などで賑わう周辺の建物を吹き飛ばし、日本人2人を含む202人が死亡し、数百人が負傷した。世界的観光地のバリ島で起きた大規模テロは国際社会に大きな衝撃を与えた。

捜査当局は事件をインドネシアのテロ組織「ジェマ・イスラミア(JI)」の犯行と断定して、主犯格のJI幹部を逮捕、裁判で死刑が確定し2008年に執行している。

しかしJIの精神的指導者とされたアブ・バカール・バシル師は別のテロ事件で逮捕されたが、2021年に刑期満了で出所している。バシル師はこれまでバリ島爆弾テロとの関係を否定し続けている。

インドネシアにはJIの他に「ジェマ・アンシャルト・ダウラ(JAD)」、「ジェマ・アンシャルット・タヒド(JAT)」、「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」、「西部インドネシアのムジャヒディン(MIB)」などのテロ組織の他に「イスラム・シャリア活動フォーラム(FAKSI」「シャリアを求める学生運動(Gema Salam)」などのイスラム過激派組織がある。

国家警察は9月29日に中部スラウェシ州を主な活動拠点とするMITに関して、「残党幹部を射殺した」として実質的に壊滅させたと勝利宣言を行った。

諸手を挙げて喜んでいられないのは、テロ組織や過激派組織には正規のメンバー以外にシンパや心酔者が潜在的に存在し、組織を継承するケースが多いこともあり、厳重な警戒と監視という点から「勝利」に酔っている場合ではないのだ。

2015年以降に逮捕されたテロリストとされる容疑者は実に1362人に達するという数字もある。2021人でさえ370人が逮捕され、爆弾テロ事件は2021年でも6件起きているのが現実なのだ。

インドネシアのテロ組織は警察の捜査が厳しくなるにつれて地下に潜ったり、イスラム寄宿学校で洗脳工作を行ったりと「イタチごっこ」が続いているとみるのが妥当だ。

ハリウッド映画でハリソン・フォード主演の「今そこにある危機」という作品があるが、インドネシアのテロはまさに「今そこにある危機」と認識して行動することが肝要だ。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。