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ガンジャル知事始動 大統領選 PDIPの指名は依然不透明

2024年の大統領選に向けて有力候補者が出馬表明したり政党間の合従連衡の動きが報じられたりする中、大物有力候補者でこれまで大統領選への去就を明らかにしてこなかったガンジャル・プラノウォ中部ジャワ州知事が動き始めた。

10月18日、ガンジャル州知事は所属する「闘争民主党(PDIP)」の支持を前提にして大統領選への「出馬の準備はできている」と意欲を明らかにしたのだった。

これで各種世論調査で常に上位を争っているプラボウォ・スビアント国防相、アニス・バスウェダン前ジャカルタ州知事、リドワン・カミル西ジャワ州知事そしてガンジャル中部ジャワ州知事と一応「役者」が出そろったことになる。もっともリドワン西ジャワ州知事は大統領選への出馬を明確にはまだしていない段階だが、人気と呼び声は高い。

ところがPDIPは同月24日にジャカルタの党本部にガンジャル州知事を呼びつけてこともあろうに「訓告処分」をハスト・クリスヤント事務局長が言い渡したのだった。

大統領選候補者は党首のメガワティ・スカルノプトリ元大統領に一任するとの党大会での決議があり、これに出馬意欲表明が反したというのが理由という。「党の支持を前提にして」と条件付きでもメガワティ党首の怒りに触れたようだ。

メガワティ党首は実娘のプアン・マハラニ国会議長の大統領候補擁立に拘っており、プアン議長の人気や信望の低さ、党内でもガンジャル州知事支持が多いことを無視して独立の父スカルノ初代大統領から自分、娘へと連なる「血脈」を優先するあまり、最大与党としての国会の地位そして政権与党としてジョコ・ウィドド大統領を支える政権としての立場という「公」を危うくしようとしている、と地元紙も警告している。

ガンジャル州知事の膝元である中部ジャワ州に党首でもないプアン議長の顔写真が入った特大ポスターを掲示するなど「ガンジャル州知事への当てつけ、嫌がらせ」も逆にガンジャル人気を確実にしているという空気をメガワティ党首やプアン議長は意図的にかどうか不明だが読めず、「ご注進」に及ぶ側近もおらず「唯々諾々」とする「木偶の坊」ばかり、というのは言い過ぎだろうか。

プアン議長の大統領候補指名となれば最悪のケースとして党の分裂やガンジャル知事の離党もありえる事態といえる「結党以来最大の危機」を迎えることにもなりかねない。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。