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中国海警局船舶がEEZ侵入 開発中の油田偵察か ナツナ

2022年12月末から2023年1月の年始にかけて、南シナ海南端のインドネシア領ナツナ諸島北方海域には中国海警局の船舶が遊弋していた。そしてインドネシアの排他的経済水域(EEZ)内に侵入したのだった。

海警局の船は1万2000トンで重機関銃を装備し、ヘリコプター格納庫、離発着甲板を備えた最大級だった。

この船舶はEEZ内で英独立系石油会社とインドネシアが共同で約10年前から開発を続けている海底油田である「マグロ油田」の現状を「偵察」していたとの見方も出ている。

同海域では中国側が独自に海洋権益を主張している「九段線」とインドネシアのEEZが一部重複しているとして「2国間での話し合いで解決したい」と中国側は提案している。

しかしインドネシア側は「当該海域で中国と協議するような問題は存在しない」(ルトノ・マルスディ外相)と毅然とした姿勢を示し続けている。

南シナ海を巡っては中国との間でフィリピン、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、台湾が領有権問題を抱えているが、インドネシアはナツナ諸島北方海域のEEZ問題、それも「中国側の一方的主張」があるほか、ベトナムや中国などの漁船による不法操業に直面、取り締まりを強化している。

かつてスシ・プジアストゥティ海洋水産相が拿捕した違法操業の外国漁船を爆破処分するという強硬手段で話題となったことを覚えている人も多いだろう。スシ海洋水産相はドスのきいた「だみ声」でタバコや酒を嗜み、脚には刺青があるという「女傑」だった。その漁船爆破シーンが劇画「ゴルゴ13」にも登場したことでさらに有名となった。

ナツナ諸島のナツナ・ブサール島にはスシ大臣の肝いりもあり海軍や海上保安機構の活動拠点が拡張整備され、同海域での警戒監視活動が一段と強化された経緯がある。
日本と同じ海洋国家であるインドネシアにとって周辺海域の海洋権益を保護することは重要な「国益」である。

中国海警局の船舶が「マグロ油田」に関心があることは間違いなく、開発状況を確認しながら実際に操業が予定される2026年に向けて「九段線」を盾にしてなんらかの主張を言いだしてくる可能性も指摘されている。

2023年も南シナ海は「波高し」の状況が続くとみられ、国益保護と同時に東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国として南シナ海問題への舵取りに期待が寄せられている。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。