雇用創出法の代替政令(Perppu)が12月30日に発行されて以来、その策定プロセスや最低賃金に関する内容等に対し、労働者と企業側の双方から懸念が噴出している。
そもそも雇用創出法は、70以上の法律を一度に改正しひとつの法律にまとめた「オムニバス法」のひとつである。雇用創出法は2021年11月に憲法裁判所によって違憲と判断され、政府には改善のために2年の猶予が与えられていた。当時、インドネシアの法律ではオムニバス法の策定が認められていなかったことや、改正の際に公聴会が不十分だったことなどが違憲となった理由である。
政府は昨年のうちにオムニバス法策定についての法律を改正済みのため、その点に関しては問題ない。今回の代替政令の発行は、憲法裁判所が要求した「公聴会の実施」について、政府が露骨に無視したことが問題のひとつである。
また、代替政令の内容についても、労働者の権利を損なうとして以前から労働組合によって強く反対されていた解雇時の退職金引き下げや解雇条件の緩和に関して、雇用創出法から全く改善がみられなかった。
さらに、以前から指摘されていた休日について定めた第79条と、労働時間について定めた第77条の間に矛盾が生じている点についても、今回修正されることはなかった。この点からみて、代替政令作成者が雇用創出法の問題点や不備を理解していないことがうかがえる。
そして、議論を呼んでいる最大の理由は、最低賃金の算出方法に「特定の指数」が追加されたことである。指数についての説明はなく、確実性が低くなると懸念されている。
労働組合総連合のイクバル代表によれば、政府内で代替政令を主導していたのは大統領でも労働省でもなく、ハルタルト経済担当調整相チームの可能性があるといい「大統領に同情する」とまで言っている。大統領なら労働者の声に耳を傾けると信じて、まずは大統領に対する外交行動を図るという。