特別な治癒能力を持つとされるイダ・ダヤクという一人の女性のもとに多くの人が集まっている。私立ナショナル大学(UNAS)の社会学者シギット・ロチャディ氏は「これまで常識では不可能であると理解されてきたこと、整形外科の専門家でも不可能な治療を、医学的知識のない人間が成功させられることをイダは一般の人々に見せつけた。超自然的な能力を誇示、可視化することで、彼女は人々を惹きつけることに成功した。人々が彼女のパフォーマンスに群がるのは、非論理的なものに対する好奇心、探究心、憧れがあるからだ」と話す。
イダ・ダヤクは伝統医学の開業医。彼女は伝統的な衣装を身に着けて儀式として舞踊を披露する。「星の油」と呼ばれる赤いオイルを使用してマッサージすることで患者を治療している。このオイルは、カリマンタンのダヤク族が何世代にもわたって使用してきた伝統的な薬として知られている。
保健省は伝統医学、伝統的なヒーラーに対し、登録証やガイダンスを用いて、致命的なリスクが発生しやすい病気の治療に関する規制や指導を行っている。また伝統的な医療サービスと従来の医療サービスとの統合の問題にも取り組んでいる。代替療法に対する市民の高い関心は、医療サービスへのアクセスが不十分であることを示す一つの例であるとの指摘もある。