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コーヒー大国インドネシア 高級銘柄ルアックの光と影

コーヒー「ルアック」はインドネシアコーヒー産業の貴重な産物である。その味は複雑で、酸味とナッツのような味を少々強く感じる。しかし、ジャコウネコが生み出すそのコーヒーには大きな問題が隠されている。

1991年にイギリス人のトニー・ワイルドがインドネシアを訪れ、コピ・ルアク(インドネシア語)を持ち帰り、ヨーロッパに紹介した。その後、映画「最高の人生の見つけ方」でルアックが登場し、精製方法が珍しい事もあり、有名になったという背景がある。コーヒールアックの需要が増えるのと同時に、自然の中で野生のジャコウネコがいつコーヒーの実を食べ、どこで排出するのか予測できない為、ジャコウネコの乱獲が横行し、小さな檻に閉じ籠め、コーヒーの実を与え飼育する農家が増えた。少量しか豆は採取できないが、その豆は高価で取引され、コーヒー農家にとっては大きな収入源となった。

以前訪れたバリ島で、コーヒー農園を見学した。そこで一頭ずつ小さな檻に飼育されているジャコウネコを目撃した。自然の中で育つ本来の環境とは程遠い小さな檻の中で、コーヒールアックを生産するために閉じ込められていた。豆の売上は、日本、台湾、韓国が上位だと、農園のスタッフは教えてくれた。ルアックを飲む時に、ジャコウネコが商業目的で飼育されているなど考えもしなかった。

2013年、BBCが潜入調査を行った。非人道的な環境で商業飼育されたルアックのコーヒーが、ヨーロッパでは“野生”のルアックコーヒーと表示されていることが明るみにでた。

さらに、劣悪な飼育環境について消費者に周知する運動が広がり、ヨーロッパにこのコーヒーを紹介したトニー・ワイルドは、コーヒールアックの消費を控える「カット・ザ・クラップ運動」を起こした。この問題が世界に知れ渡り、レインフォレスト・アライアンスなど、有名なコーヒー認証機関が認証印を発行する際に利用している国際NGO機関であるサステナブル・アグリカルチャー・ネットワーク(SAN)は、2014年にインドネシアの農場で檻に入ったジャコウネコを利用したコーヒー生産を禁止した。

野生のジャコウネコ由来100%のルアックは、そう簡単に見つけられるものではなく、そのため高価である。今後コーヒーを飲む時、その豆の背景にどのような物語があるのか考えると、より一層コーヒーの奥深い世界が待っている。