過去10年間でレコードは奇跡的な復活を遂げ、世界的な売上が伸び続けている。世界と国内のレコード需要に対応するため、インドネシアで約50年ぶりにレコード・プレス工場が再開する予定だ。
イギリスの業界団体であるエンターテインメント・リテール協会(ERA)は、2022年のイギリスにおけるレコード販売額が、1987年以来初めてCD(コンパクトディスク)を上回ったと報告した。また、アメリカでも、全米レコード協会(RIAA)が、2022年のレコード販売枚数が4100万枚となり、CDの3300万枚を上回ったと発表した。このレコード復活の背景には、アメリカ発祥の毎年恒例のイベント「レコード・ストア・デイ」が世界中に広がっていることがある。
「レコード・ストア・デイ」は、音楽とレコード店の文化を祝って、全世界でアナログレコードが発売される世界最大のレコードイベントである。日本でも350を超えるレコード店がこれに参加している。インドネシアは2012年から参加しており、地元のミュージシャンが限定盤のレコードの発売やライブパフォーマンスを行ってきた。
これまでもインドネシアのアーティストがリリースしてきたレコードは、すべて海外で製造されたものだった。しかしこのほど、レコード店PHRと独立系音楽レーベルElevation Recordsが合弁会社PHR Pressingを立ち上げ、6月から西ジャカルタでレコード生産を再開することとなった。国内でのレコード生産は、1974年に中部ジャワ州ソロにあった国営レコード会社Lokanantaが生産を停止して以来、およそ50年ぶりとなる。
PHR Pressingはすでに受注を開始しており、手頃な価格と短縮化された生産リードタイムにより国内ニーズに対応したいとしている。工場の生産能力は月間3万枚で、世界と国内の需要に応えるには十分な量だと言える。