インドネシア事業に関する無料相談はこちらから

怖いけれども観たい、ホラー映画 1ジャンルを確立している人気

インドネシアの映画館に行くと、常時ホラー映画が上映されている。館内のあちこちにインドネシア国産ホラー映画のポスターが貼られ、人気の高さが窺える。日本でのホラー映画の立ち位置はというと、特定のコアなファンは好きだけど、多くの人はあまり観ないという、どちらかというとニッチなジャンルだと認識している。

実際に日本の邦画興行収入トップ100に、ホラー映画は1作もランクインしていないというが、かくいう自身もホラー映画は大の苦手だし、何故にお金を払ってまで怖い思いをしにいかなければいけないのかと思ってしまう。しかし、インドネシア人は総じてホラー映画が大好きで、ホラー映画は圧倒的人気ジャンルの1つとなっている。2022年に国内での観客動員数が100万人を超えた13本の映画の内、実に8本がホラー映画だった。

最近では、インドネシアアカデミー賞7部門にノミネートされた『Pengabdi Setan 2:Communion』が邦題『呪餐(じゅさん)悪魔の奴隷』として日本でも公開されたことが記憶に新しい。

80年代に、イスラム教圏で最も恐いホラー映画として話題を集めたインドネシア映画『PENGABDI SETAN. SATAN’S SLEEP』邦題『夜霧のジョギジョギモンスター』。そのリメイク版『Pengabdi Setan』が2017年に制作され、その年の国産映画観客動員数1位を記録する大ヒットとなった。その続編である『Pengabdi Setan 2』も、インドネシア映画歴代興行収入3位となり、日本全国での公開となった。

ここまでくると、ホラー映画が何故ここまでインドネシア国民を惹きつけるのか、知りたくなる。何人かの友人に聞いたところ、ホラー映画が好きかという愚問には、全員が即答で好きだと答えた。では、何故なのか。ある人は、スリルと緊張感がたまらないと言い、ある人は怖いシーンで叫ぶことでストレス解消になると言った。また、ある人は映画で恐ろしいシーンを観ることで、実際に自分の身には起きなくなると信じていると真顔で答えた。そして、何より興味深かったのが、みんなお化けや幽霊の存在を本気で信じているのだ。信じているからこそ観ない、信じていないからホラー映画を平気で楽しめると思っていたから、その考え方には驚いた。

ちなみにこちらも昨年公開された『KKN in Desa Penari』という作品は、公開後3週間弱でインドネシア映画史上最高興行収入を記録した良作だ。興味のある人はぜひ一度恐怖体験を味わってみてはいかがだろうか。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。