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アニス知事人気に翳り、大統領選U20W杯開催反対姿勢が影響か

来年2月に迫るインドネシア大統領選。現行の憲法で大統領は連続して3期務めることができないと定められており、現在2期目を務める現職のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は、高い支持率を維持するものの次期選挙に出馬することが叶わない。

そんな中、2014年、2019年とジョコウィ氏に大統領選で2度敗れた現国防相プラボウォ・スビアント氏(グリンドラ党)に加えて、特定の所属政党を持たない前ジャカルタ特別州知事のアニス・バスウェダン氏ともに、有力候補3人のうちの1人と目されているのが、最大与党「闘争民主党(PDIP)」の現中部ジャワ州知事ガンジャル・プラノウォ氏だ。ジョコウィ現大統領の所属政党でもあるPDIPの党首メガワティ・スカルノプトリ元大統領が人気も人望もない実娘のプアン・マハラニ国会議長の大統領選擁立を断念できるかが焦点になると、以前小欄でも触れた。

ついに4月21日、党会合でPDIPはガンジャル氏の擁立を正式に発表した。ガンジャル氏は「ジョコウィ大統領の基盤を踏襲しなければならない」と語り、同席していたジョコウィ大統領も「国民に寄り添える新たなリーダーが豊かなインドネシアをさらに成長させることを願っている」と期待を寄せて援護射撃を行った。ジョコウィ大統領自身の高い人気も相まって、正式に擁立される前から、世論調査で常には支持率トップを維持していたガンジャル氏だったが、擁立された途端に、暗雲が立ち込めている。

2023年5月にインドネシアで開催が予定されていたサッカー20歳以下(U-20)のワールドカップ(W杯)へのイスラエル参加を巡り、他の有力候補者が静観する中、ガンジャル氏は明確にNOを突き付けたのだ。結果、バリで予定されていた組み合わせ抽選会のみならず、FIFA(国際サッカー連盟)によって大会そのものの開催権はく奪という事態にまで発展した。

同国において、若年層を中心にサッカー人気は非常に高い。多くの国民が今回のガンジャル氏の発言に失望を受け、「スポーツと政治を切り離せ」という発言がSNS上を賑わせた。

民間の世論調査機関LSIが行った最新の世論調査では、プラボウォ氏(18,3%)に次ぐ16,2%の2番手となり、アニス氏(13,1%)との差もわずかとなった。38,8%の無回答者層をいかに取り込めるか、残り9ヶ月の動向から目が離せない。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。