コロナ禍が始まった2020年に売上・利益が激減したインドネシアのアルコール市場は、外国人観光客の増加や新製品の投入によって、今年は増収・増益が期待されている。
国民1人当たりのアルコール消費量が少ないインドネシアにおいて、第1四半期(2023年1〜3月)は上場する多くのアルコール飲料メーカーが売上を拡大させた。ハイネケンインターナショナルの子会社で、インドネシアの代表的なビールである「ビンタンビール」を製造するマルチ・ビンタン・インドネシアは、前年同期より売上高が9.8%増加し、7400億ルピアとなった。コロナ禍の2020年には売上高が30%以上、利益が60%以上減少した同社は、自社の回復に伴い業界を活気づけている。ただし同社は、コロナ前の水準にまで完全回復するのは、早くても2024年になると予想している。
この他、今年新たに新規株式公開(IPO)を果たした中小メーカー2社も好調だ。バリ島のワインブランド「Hatten」を展開するハッテン・バリは、観光需要の後押しもあり売上高が2倍になった。インドネシアの伝統酒「Cap Tikus」を製造するジョブブ・ジャルム・ミナハサも、売上高が5.4%増加した。
一方で、ビールブランドの「Anker」や「Carlsberg」を展開するデルタ・ディジャカルタは、同期の売上高が1.2%減少した。ラマダンの開始時期による季節的な落ち込み要因によるものとみており、年間ベースでは前年を上回ると見込んでいる。
ビンタン社のルネ社長は「パンデミックによって、観光に依存するだけではダメだということがわかった。バリ島は引き続き重要な市場であるものの、国内の非観光地域への進出にも取り組みにも力を入れていく」と説明している。具体的には、同社はコロナ禍において「ビンタン・クリスタル」を新発売した。さらに、今年に入り小売店限定で赤ワイン風味の「ビンタン・アングル・メラ」の発売も開始し、アルコール市場を活性化させている。