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大統領の食卓事情、その裏表 好き嫌いから毒見役まで

現職の大統領が海外などで外食する場合やホテル内外で食事する場合に、インドネシアの場合「お毒見薬」が事前にチェックする。現在は詳らかではないが少なくとも2000年代初頭のメガワティ・スカルノプトリ大統領時代は間違いなくあった。筆者自身がその場面に立ち合っていたからだ。

「お毒見薬」は女性秘書で、禁忌とされる豚肉やアルコール類も口にできるキリスト教徒だった。大統領の食事を伴う公式行事では会食1時間前に事前にレストランが指定され、提供される食事と全く同一のメニュー、飲み物が全て用意され「お毒見薬」が試食試飲する。もう時効だからいいだろうが、お毒見役とはかなり親しかった関係から同行したシンガポールのレストランで筆者は「日本食材もあり第二試食役だ」としての「お毒見」の恩恵に預かったものである。食事を提供するレストランも政府の威信がかかっているだけに最高の食材による最高の食事が提供される。

メガワティ大統領の肉類は鶏肉、それも鶏胸肉しか基本的には口にせず、行きつけの銀座のじゃぶしゃぶ店、すき焼き店、御殿場のステーキ店、イタリアンレストランなどでは鶏胸肉や蟹を特注していた。豚肉は一切食べず、牛肉は最高ランクA5のサシのはいったのではなく、赤身をたまに食べるだけだった。

生魚は多くのインドネシア人と同じくサーモン、イクラ、トビッコが好きだが基本的には口にせず、トロ、サーモン、蟹はしゃぶしゃぶでなら食べた。海苔が大好きで日本からの土産には軽くて日持ちのする海苔を喜んだ。わさびそれも本わさが好物でボゴール近郊の自家農場では長野・安曇野から持ち帰ったわさびの栽培を試みたこともあるが、どうなったことやら。本わさで食する刺身やしゃぶしゃぶ、そしてざるそばが好物だった。日本の特定銘柄のビールや梅酒も非公式では嗜む。

「ジャカルタには美味しい日本そばとクリームパンがない」と嘆いていたこともある。

毎年桜観光に訪れる京都ではマックのハンバーガーを食べ、たこ焼きも大好きという庶民派の一面もみせる。葛切りやわらび餅の伝統的デザートも好きだが夕張のマスクメロンや岡山の桃も好物だ。

インドネシア料理では「ソト・アヤム・イブ・メガ」やプラボウォ国防相に腕を振るったという「ナシ・ゴレン・イブ・メガ」が最高との自身の触れ込みだが私邸のシェフなどによるとプラボウォ国防相はお代わりしたが「味はいたって普通」(内緒)とのことだ。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。