ジャカルタっ子が空を見上げた。9月12日、ジャカルタに青空が広がったのだ。何度目の青空か。つい先日、小欄で大気汚染を取り上げた。ジャカルタでは大気汚染が深刻化しており、青空が広がることはまずない。そんな記事の掲載翌週に、ジャカルタの空が青く澄んで輝いた。
X(旧Twitter)にも、青空の写真とともに「綺麗な空」「何があったんだ」「いつ振りだろう」などとのコメントが相次いで投稿された。偶然では起こりえないと思えるほどの青さだった。
どうやらここ数日、ジャカルタでは新しい大気汚染対策が試験的に行われていたらしい。国家災害対策庁(BNPB)の発表によると、9月4日から11日の8日間、セスナ機2機が計82時間50分の飛行で70,500リットルの水を空中噴霧した。
この水というのが果物を加工した際に出る廃棄物由来の酵素などを含んだもので、空中でバクテリアを増殖させ、汚染物質を人体に無害な化合物へ変換させるシロモノなのだという。さて、時期を同じくして2日から7日までジャカルタでは東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議、日中米首脳との会議など一連の会議が開催された。
日本の岸田首相も来イし、5日から8日までジャカルタ中心部に滞在した。ジョコウィドド大統領は世界各国の首脳にジャカルタの青空を見せ、世界一の大気汚染という悪印象を払拭したかったのだろう。
しかしその目論見は見事に外れ各国首脳が帰途についた後にやっと青空が広がったというわけだ。では、何故効果がすぐに現れなかったのか。
BNPBのアブドゥリ・ムハリ氏は「PM2.5大気汚染指数(AQI)の数値が減少していることから分かるように、空中噴霧の効果は着実に出ている。12日は特別強い風が吹いて、汚染物質が広範囲に拡大し、濃度が下がったため青空が広がった」と語っている。
結局は天気次第というように聞こえなくもないが、やれ公務員は在宅勤務にする、偶数奇数通行対策を24時間にするなど迷走した対症療法だけではなく、効果の期待できる対症療法に取り組んでいたのはとりあえず一歩進んだと言えるのではないだろうか。
イメージアップの一時しのぎではなく、未来の綺麗なジャカルタの空への一歩を踏み出す根本的な大気汚染対策にもしっかりと取り組むことを期待したい。