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警察官の所属希望先として人気の交通警察  裏腹に国民の信頼度は最下位

1位は90点でデンマーク、2位にはフィンランドとニュージーランドが並ぶ。日本は73点で18位、そしてインドネシアが34点で110位。このランキングが何のランキングが分かるだろうか? 勘がいい人は思いあたるかもしれない。ドイツの国際NGO団体トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が、2022年度に発表した世界汚職度ランキングである。

比較的、発展途上国の政治が腐敗にまみれ、警察など公務員が汚職に手を染めるイメージが強いが、ご多分に漏れずインドネシアも腐敗している。2003年に当時のメガワティ大統領下で汚職撲滅委員会(KPK)が発足され、それ以前よりは汚職事案が減ったとされているが、それでも官僚や首長が汚職で逮捕されるというニュースが後を絶たない。

そんな中でも外国人駐在員が一番身近に感じるのが、交通警察(Polisi Lalu Lintas)の賄賂要求だろう。ジャカルタ中心部の幹線道路には、渋滞対策としてナンバープレートの末尾で通行を規制する「奇数偶数制度」があり、その違反者を検挙するのも交通警察だ。本来の違反金を説明した上で、ここで現金を払えばそのまま見逃すと持ちかけてくる。その相場は10%~50%程度であることから、払う方にとっても安く早く済んでしまい、結果的に賄賂横行に拍車をかけている。

そんな光景がバイクのノーヘル運転や信号無視、車線変更違反、バスレーン侵入など街のそこらじゅうで繰り広げられている。私の知人は左折するために自転車通行帯を横切ったところを呼び止められたらしい。クーラー吹き出し口に取り付けた芳香剤を外して見せろと言われまじまじとチェックされたらしく、後から聞いたら車内カメラでSNSに流されることを恐れての確認だそうだ。カメラがないと分かれば賄賂要求に移行し、こちらが外国人と分かればより高圧的な態度に変わる。ジャカルタでは賄賂横行が問題視され、一時道端の警察官が減った時期があった。監視カメラでの取り締まりへ移行する一環だったが、ナンバープレートを外す車両が増えたことから、また交通警察が道端に戻ってきている。

以前の世論調査で、誠実だと思われる公共機関を国民に問うたところ、国軍や州政府、検察、裁判所、税関、国会、マスコミ、交通警察以外の警察などを差し置いて、交通警察が最下位であった。しかし、警察希望者の半数近くが、交通警察への配属を希望しているという。その真意を推し測ることは難しいが、簡単にお金が手に入るという安易な気持ちではなく、首都の交通安全を守りたいという純粋な気持ちでの就職希望だと願いたい。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。