ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されている「ワヤン(wayang)」は、観るものを感動させる舞台芸術であり、国内外の教育機関で今も研究が続けられている貴重な文化芸術である。ワヤン芸術の保護と振興を目指しインドネシア政府は毎年11月7日をワヤンの日に制定した。知っているようで実はあまりよく知らないワヤンについて、この機会に少し学んでおこう。
「ワヤン」という言葉はジャワ語で「影」を意味する。ワヤンは、怒気、貪欲、吝嗇、賢明などといった人間の特徴の影または反映である、という哲学的な解釈をされることも多い。古代インドの叙事詩を演じる影絵芝居ワヤン・クリのように、ワヤンは伝統的な神話やさまざまな教訓を伝える手段として発展し続けてきた。
ワヤンにはたくさんの種類があり、それぞれに独自の特徴がある。伝統儀式の一部として行われることも多いワヤン・クリで使用される人形は水牛またはヤギの皮から作られている。米国のバークレー、フランスのエブリーなどでも上演されたことがある。インドネシア最古のワヤン・ゲベルはイスラム教が伝わる前から存在していたといわれている。木偶人形芝居ワヤン・ゴレでは木製の人形が使用されるのに対し、ワヤン・オランは服、アクセサリー、メイクアップを工夫して人形に扮した人間が演じる。