インドネシアにはバティック以外にも美しい染物・織物が多数ある。伝統儀式や結婚式で着用される「ソンケット・ミナンカバウ」はミナン族の生活に欠かせない伝統的な織物。各モチーフには異なる意味があり、昔、文字を書くことができなかったミナン族は、自分の気持ちをソンケットに書いて表現したといわれている。シダの若芽のモチーフには、他人を批判する前に自己内省をするという意味、若竹のモチーフには人間は生涯を通じて他者の役に立たなければならないという意味が含まれている。
2013年に無形文化遺産に認定された「ソンケット・パレンバン」は芸術的価値が高く、繁栄、栄光、勇気などを象徴する。その名は「引っ掛ける、つまみ上げる」などの意味のマレー語「ソンケット」に由来しており、平織地の間に金糸で浮織を施すという製作過程を表している。一方向のしま模様が特徴の織物「ルリク・ジョグジャカルタ」は綿繊維、木繊維、絹繊維、または合成繊維で作られており、さまざまな衣服を作るのに適している。「サシランガン・バンジャール」は12世紀に誕生したといわれる。南カリマンタンのバンジャール族の間では、この布には病気の治療や悪霊を追い払う魔法の力があると信じられてきた。各モチーフには、力強さ、誠実さ、美しさ、親しみやすさなどの意味がある。