今年は3月29日がバリ・ヒンドゥーの正月「ニュピ」にあたる。ニュピの数日前にはご神体や供物を清める儀式「メラスティ」が各地の寺院で行われる。そしてニュピの前日には、バリ島のあらゆるバンジャール(村内を小分割する自治組織)で負の要素を打ち払う「ブタ・ヤドニャ」と呼ばれる浄化儀礼が行われる。ブタ・ヤドニャには、さまざまな供物を捧げる儀式(mecaru)、大きな音を立てて線香や松明の煙を撒き散らしながら集落を回る悪霊払いの儀式(ngrupuk)、「オゴオゴ」と呼ばれる巨大な張りぼてが街を練り歩くパレードなどが含まれる。
オゴオゴは人間の生活におけるネガティブな要素や人間の悪い性質、悪霊などを象徴する巨大な悪魔の像。かつては竹製の骨組に紙を貼って作られていたが、近年では、発泡スチロールなどの素材を使ってより精密で洗練された像が作られるようになった。各バンジャールがニュピの数週間前からオゴオゴ制作に取り掛かる。他のバンジャールよりも優れたオゴオゴを制作することに夢中になる若者も多く、オゴオゴ制作は、伝統の一部であるとともに、地元の若者が創造性を発揮する場にもなっている。オゴオゴのパレードは観光客も楽しめる毎年恒例のお祭りと化していてププタン広場、グラウンドゼロ記念碑、レノンエリアなどで見られる。