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インドネシアから撤退する際の手続き

インドネシアに現地拠点を開いたものの、何らかの事情でそれを閉じなくてはならないことがあります。撤退にかかる手続きについて説明します。

会社解散に関わる法務上の手続き

インドネシアの法人(株式会社)を解散する場合、法務上必要な手続きは次の通りです。

一般的な企業の場合

  1. 株主総会で会社の解散を決議し、清算人チームを指名する。
  2. 会社の解散を決議した株主総会の議事録を公正証書化する。
  3. 会社の解散が株主決議されたことを全国版の新聞に掲載する。さらに債権者などに異議がある場合は、申し出るよう公告する。
  4. 会社の解散決議議事録(証書化したもの)及び関連の新聞広告などを法務人権省に持ち込み、解散についての法務人権相の承認を受ける
    (これにより、該当法人は「清算中企業」というステータスになる)。
  5. 投資調整庁(BKPM)に会社の解散を届け出る。これにより、投資調整庁は、投資企業としての登録を抹消する。
  6. 商業省に会社の解散を届け出、会社登録証(Tanda Daftar Perusahaan:TDP)を返却する。

駐在員事務所の閉鎖の場合

インドネシアに構える駐在員事 務所を閉鎖するケースもある。ただ、法人格がそもそも存在しないため、株式会社の解散と違い清算にかかる法務上の手続きなどは不要。駐在員事務所の閉鎖に必要な主な手続きは以下の通り。

  1. 契約関連の終了
  2. 雇用契約の終了
  3. 債権や債務の処理、清算
    駐在員事務所は「営利目的の活動はしない(認められていない)」という位置づけで、利益を得るものではないため、納税にか かる税務当局との問題は生じな いと考えて良い。

税務上の清算プロセス

会社の解散が法務人権相によって承認されたら、会社は管轄の 税務署に「会社の解散」を届け出、会社の納税者番号(NPWP) およびVAT課税業者登録(PKP)を返却して、これらの抹消を申請します。

これを受けて税務署は税務調査に入ります。 この際税務署は、財務報告や関連書類の提出を求め、税務債 務などが残っていないか調べますが、これと同時に納税や申告の 誤りなども調査します。往々にして“間違い”を指摘して来るケース もあり、税務署とのやりとりに1年以上かかることが一般的です。

調査結果について税務署と会社の間で合意が成立し、税務債務などがあれば完済された後、税務調査は終了となり、会社の納税者番号やVAT課税業者登録が抹消されます。

会社解散時における労務上の注意点

会社の解散が法務人権相に承認されたら、次に労務上の手続きを進めることになります。労務上における注意点は以下の通りです。

  1. 管轄の労働局に会社の解散を届け出る。
  2. 従業員に対し、会社の解散を発表する。その上で「解雇日」を設定してこれを通知する。
    解散の発表及び解雇日の発表は、時間的余裕を十分に取って行うこと。
  3. 個々の従業員との間で「解雇に関わる取り扱い」「双方の権利と義務」などを明記した合意書を締結する。
    労働組合がある場合は、まずは労働組合との話し合いを行う。
  4. 清算中の会社にとって、従業員に対する残りの賃金や退職金の支払いは最優先で処理すべき債務となる。
  5. 退職手当の計算方法は次の通りとなる。
    会社の財務状況の悪化や倒産、不可抗力による会社解散の場合
    →退職金、勤続功労金ともに規定の金額を支払う。
    会社の効率化による事業閉鎖の場合
    →退職金は規定の2倍を支払う。

会社解散に伴う駐在員帰任の手続き

会社解散に伴う駐在員が帰任する際の手続きは以下の通りです。

  • 管轄の入国管理局事務所に対し、暫定滞在許可証(ITAS)を返却し、出国許可(EPO)を取得する。
    なお、EPOを得たのち、7日以内の出国が求められるため、帰任日を決めてから出国許可を申請することが望ましい。
  • 納税者番号の抹消のタイミング
    税務当局による簡易調査が終わり、税務債務(所得税の未払い) が存在しない、もしくは完済されたと認められたのちに抹消される。
    EPO発給から帰国まで最大7日間しかないため、税務債務の処理はあらかじめ済ませておくこと。
  • 労働許可(IMTA)を管轄労働局へ返却する。
  • 登録税務署にEPOを持ち込み、納税者番号(NPWP)を返却する。
    税務署は個人所得税に関する税務債務の有無などを確認するための簡易調査を行う。
  • 帰任にかかる確定申告
    帰任でインドネシアを離れる年度の確定申告も必要となる。ただ、所轄税務所により納税者番号の返却時に求められるケース、もしくは当該年度が終了した後に提出するように案内されるケースの2通りがあり一定しない。