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存在感増すサンディアガ・ウノ氏 背後に見え隠れする政治的意図

ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領率いる現政権がコロナ感染対策、ワクチン接種という最重要課題に専心する中、閣僚の1人サンディアガ・ウノ観光創造経済相の存在感が増している。コロナ禍の中で続く国内外の移動制限、観光自粛の潮流にも関わらず地元メディアにサンディアガ観光相が登場する機会が増えている、というか目立っている。

2020年12月22日に発表されたサンディアガ氏の入閣は驚きをもって迎えられた。2019年の大統領選でジョコウィ大統領の対抗馬として争ったプラボウォ・スビアント氏の副大統領候補、つまりジョコウィ大統領とは「政敵」だったからだ。

もっともそのプラボウォ氏も第2期ジョコ・ウィドド内閣では国防相という要職で入閣、率いる「グリンドラ党」も野党から与党となったように「何でもあり」「選挙終われば敵味方なし」という”インドネシア流”からすれば驚くには値しないともいえる。

もともとプラボウォ氏の副大統領候補に擁されたのもサンディアガ氏のビジネスマンとしての手腕、財力そして特に女性中心とした若者の人気度を当て込んだもので、必ずしも政治的な立場や姿勢を反映したものではなかった、と指摘されていた。それだけにジョコウィ大統領にしてみれば、幅広い人材の閣僚登用による政権の浮揚、人気盤石化にサンディアガ氏は格好の人材だったといえるだろう。

就任直後からそうしたジョコウィ大統領の思惑を反映したようにサンディアガ観光相は積極的に動いた。バリ島やバタム島に直接赴いてコロナ禍で低迷する観光業への支援や回復策などを積極的に地元関係者などと協議。1月19日には西ジャワ州のリドワン・カミル州知事と直接会談するなどフットワークの軽さも評価を高めている。最近はインドネシア伝統音楽の「ダンドゥット」をユネスコの無形文化遺産に登録申請する方針、というニュースが注目を集めた。

2024年の次期大統領選でサンディアガ氏の出馬を求める声は根強い。3度目の正直で出馬するとみられるプラボウォ氏とペアを組む可能性より、新たな大統領候補と組んで「次の次の大統領」を目指すといわれている。その為にも閣僚としての実績を積み重ね、人気維持が必要不可欠なことがサンディアガ観光相の昨今の積極的な活動ぶりの背景にあるとの見方が有力だ。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。