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スメル山が噴火、死者56人の惨事 インドネシアは日本と同じ火山大国

12月4日午後3時過ぎ、東ジャワ州のスメル山(3676メートル)が噴火し、噴煙を高く上げるとともに火砕流が発生し、麓の村を襲い逃げ遅れた住民34人が死亡し、56人が火傷などで負傷し、1300人以上が避難する事態となった。改めてインドネシアは日本と同じ火山国で、活火山の活動がいつあるかが山麓周辺に居住する人々にとっては最大の関心、不安材料となっている。

インドネシアには127もの活火山が存在する。噴火を繰り返して被害をだしている火山としては最も活動が活発で年中噴煙を出している中部ジャワ州のムラピ山、ロンボク島のリンジャニ山、バリ島のアグン山、ジャワ島とスマトラ島の間スンダ海峡にあるランプン州のカラカタウ山、カルデラ火山で観光客も多い東ジャワ州のブロモ山、カルデラ湖で知られる北スマトラ州シナブン山などがある。

火山研究や観測、さらに付随する地震や津波などの災害による被害を最小限に抑制するため、あるいは事前にその予兆を観測データなどから捉えるために、日本の各関係機関がインドネシアの気象地球物理庁や国家捜索救助庁などに専門家を派遣して技術指導、協力を続けてきた。

2004年12月26日にはスマトラ島沖地震津波が発生して多数の犠牲者を出すなど、インドネシアは日本と同様に島国でありそして火山噴火、地震、津波といった災害大国でもあるのだ。

今回のスメル山での被害は火砕流によるものだが、火砕流で忘れられないのは1991年6月3日雲仙普賢岳で大規模な火砕流が発生し取材中の報道関係者ら44人が犠牲となった事故だ。ちょうど同じ日、筆者はスリランカ中北部の国軍前線司令部にいた。インドのラジブ・ガンジー氏を爆殺したスリランカの反政府勢力「タミール・イーラム解放の虎(LTTE)」の拠点北部ジャフナの取材だった。これから先は「安全に責任を持てない」という軍司令官の言葉を軽い気持ちで聞き、現地に向かう国際支援団体の車列についていくので大丈夫と東京本社に連絡したら温厚な外信部長が「社命だ、すぐ引き返せ」と怒鳴った。普賢岳の犠牲者に毎日新聞関係者3人が含まれていたその当日だったのだ。

ジョコ・ウィドド大統領もバイクレース場や新首都、グリーンパーク、高速鉄道などの建設に費やす国費をもっと防災インフラの整備、拡充にまわせないものだろうかと思う。救える命を救うために。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。