新型コロナのパンデミックにより打撃を受けたインドネシアの観光業は、回復の途上で世界的不況の脅威という逆風に直面している。
世界銀行、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)は、2022年と2023年の世界経済成長率予測を引き下げ、これに反してインフレ率予測は上方修正を行った。世界経済の混乱は、人々の家計支出、特に旅行やレジャーのための余暇支出に影響を与え、観光業へも影響を及ぼす。インドネシアの観光業は、以前の移動制限に苦しんでいた状況から、緩和されて間もなく、外国人観光客が財布の紐を締めるという別のハードルに対峙しているのだ。
コロナ前の2019年、インドネシアを訪れた外国人観光客の約4分の1が、長引く高インフレに伴い景気後退リスクが高まっているヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアからの旅行者であった。これら地域からの観光客は旅行日数が長い傾向があり、インドネシアへの1回の旅行で平均1200~1400米ドルを支出する。これは、平均支出額が1000米ドル未満のアジアの観光客よりも多い。
サンディアガ・ウノ観光・創造経済相は、世界経済が観光業へ与える影響は、国内観光客の増加でカバーできると楽観的だ。今年の国内観光客目標5億5000万人の達成に向け、順調な推移だと評価している。
しかしながら、インドネシア旅行代理店協会(Astindo)は、航空券の価格高騰により海外だけでなく国内観光客の回復も妨げられており、外国人観光客からの収入減少分を補うことはできないと語った。特に、G20サミット開催地のバリ以外の地域では、観光客が少ないと指摘した。
他方、観光業を主とする地域の変化をみてみると、バリでは当局が観光業以外の漁業や農業などを強化し、バリの経済を多様化しようとしている。また、観光業の従事者が仕事を変える傾向がすでにみられる地域もあるという。