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陸軍少佐に終身刑、パプア人殺害 軍と司法で正義実現の兆候か

東ジャワ州州都スラバヤの軍事法廷は1月25日、陸軍少佐に殺人罪などで終身刑を言い渡した。同少佐は2022年8月26日にパプア州ミミカ県にあるイワカ村で発見されたパプア人4人の遺体に関連して同僚の兵士5人らと殺人容疑で同月29日に逮捕されていた。少佐以外の兵士はパプア州州都ジャヤプラの軍事法廷で審理が続いているが、被告の兵士1人は12月に病死したという。

事件は凄惨なものだった。武器密売の容疑者とされたパプア人4人が少佐らに殺害され、犯行を隠蔽するために遺体は頭部と脚が切断され、重しを付けた袋に入れられて川に投棄されたのだった。

4人にかけられた武器密売容疑に関しては所持していたという銃器が遺体と同じく川に投棄されており、証拠不十分で立件されていない。となると武器密売に少佐ら軍が関与していた疑いも浮上しているが裁判では明らかにならなかった。

パプアの人権団体や犠牲者の遺族は「正義が実現された。判決に満足している」などと少佐への終身刑判決を評価している。

というのもパプア人への殺害や暴力行為で兵士や警察官という治安当局者が訴追され、有罪判決が下ることは珍しく、大半が不問に付されるか無罪あるいは軽い判決が出るのが、これまでは一般的とされていたからだ。

インドネシアでは「汚職撲滅委員会(KPK)」と「国家麻薬取締局(BNN)」が最強の捜査機関とされる一方で、国軍や国家警察さらに裁判所、入国管理局などの機関は依然としてスカルノ長期独裁政権の悪弊である「汚職・腐敗・親族主義(KKN)」が根深く巣食っていて国民の信頼や期待を裏切り続けているという実態がある。

国家警察幹部が妻への性的暴行を理由に部下の警察官を射殺した事件の裁判はマスコミが大きく取り上げているが、最近の公判では殺害した部下と妻の不倫関係が取り沙汰されるなどの新たな展開をみせている。

にもかかわらず同事件では1月17, 18日に検察側が幹部に終身刑、妻らその他の容疑者には禁固8年から12年という予想外に軽いものだった。司法の場で果たして正義が実現されるのか判決が注目されている。

こうした中で、パプア4人殺害事件では軍事裁判が一応機能した。2022年6月以降の軍事裁判で終身刑の判決を受けた軍人はこの少佐で3人目となるという。少しづつだが国軍が正義を取り戻していると思いたい。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。