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世界のサーファー憧れの上質の波  深刻化する環境問題への対応課題

世界には3500万人のサーフィン愛好家がいるといわれ、インドネシアにサーフィンを目的として訪れるサーファーは多い。

インドネシアには多数の上質な波が存在し、その波を求めて世界中のサーファーが集まる。バリ島以外にもメンタワイ諸島、ロテ島、G-LAND、クルイなど波の宝庫なのだ。

6月に行われたクルイの大会(QS5000)では、女性部門で日本人の松岡亜音選手、女性ジュニア部門で中塩佳那選手がそれぞれ優勝。クルイ大会の会場となったのはウジュン・ボチュル(Ujung Bocur)。最寄りのバンダル・ランプン空港は、ジャカルタから空路で約1時間、その後陸路で約6時間の僻地にある。しかしそこには極上の波があり、必然的に世界中からサーファーたちが集まるのだ。

バリ島は世界屈指の観光地であり、サーフィン天国でもある。しかし、バリ島が抱えるプラスチックごみ(海洋プラスチック)問題は深刻だ。バリ島では、亀などの海洋生物がプラスチックごみを誤食してしまい、こうした生態系への悪影響が問題視されている。

2019年、バリ島のクラマスビーチで行われた大会では、五十嵐カノア選手が優勝し盛り上がったが、大会の名前が「Corona Bali Pro」から「Corona Bali Protected」に変更された事も話題になった。変更された理由はバリ島の海洋プラスチック汚染を考慮し、バリ島を保護していく、というものだった。大会期間中にはリサイクルしたプラスチックで作ったサーフボードやフィンの使用、また海洋保護に取り組むNGO団体「Parley for the Oceans」 のトークショーやビーチクリーンの実施が、バリ島の環境問題を強く意識させるようサーフィン界に一石を投じた。

National Plastic Action Partnershipによると、年間680万トンのプラスチックごみがインドネシア国内で発生し、回収されるのはわずか39%。残りの61%は未回収で、野焼きなどで環境へ流出しているとみられると発表した。

数年前にジャカルタ市内から車で約3時間のジャワ島南部の町プラブハンラトゥを訪れた。チマジャというサーフポイントに地元のサーファーが連れて行ってくれた。その他にもサーフスポットが点在し、現地の子供たちが無邪気にサーフィンを楽しむ姿が印象的だった。話しかけると、近くに住む中学生で学校終わりにサーフィンをしていると教えてくれた。当時を思い出し、現地の若い世代のためにも、環境問題と真摯に向き合わないといけないと改めて感じている。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。