世界各地には地域で語り継がれてきた数々の民話がある。西スマトラ州のエアマニスビーチ周辺は、同地を舞台にした民話『マリン•クンダンの石』に登場する伝説の岩石を見ようと、今日も多くの人で賑わっている。
『マリン•クンダンの石』は西スマトラ州のミナンカバウ人の間に古くから伝わる民話。貧しい生まれの少年が船乗りとなり母親の元を離れ成功したが、母親を思いやる気持ちをすっかり忘れ、長い間彼の帰りをずっと待ち続けていた老いた母親を粗末に扱った罰として雷に打たれ岩になってしまうという物語。1994年に作家のNavis氏が西スマトラの民話をまとめて出版した書籍に『マリン•クンダン』の題で収載されたことなどをきっかけに広く知られるようになり、今では子供は親を敬い、尽くし、感謝する気持ちを忘れてはいけない、という教訓と共にインドネシア全土で語り継がれている。
エアマニスビーチにあるマリン・クンダンの体が石化してできたとされる岩が、深く頭を下げている人のような形をしていること、また周囲にはマリン・クンダンと一緒に雷に打たれ大破した船の破片や錨に似た別の岩もあることから、この伝説は実話に基づくと信じる人もいる。しかし実はこの岩は観光誘致を目的に人工的に作られたものであり、そのことを知る人は少ないようだ。