イスラム暦の巡礼月(12月)にメッカまで旅をし、同月の8日〜10日にメッカ郊外で行われる儀式に参加するハッジ(大巡礼)は、実践可能な身体能力と財力のあるすべてのイスラム教徒は一生に一度は行うべきとされる、五行のひとつ。預言者ムハンマドの信仰を讃え、犠牲祭用の牛や羊を屠(ほふ)り神に捧げる祝祭「イード・アル=アドハー(犠牲祭)」は、この大巡礼を締めくくるイスラムの2大祝祭のひとつとして知られている。
ハディース(預言者ムハンマドの言行録)にも、イード・アル=アドハーの祝祭に行われる動物の献上が、神に愛される重要な行いであることが記されている。この生贄を屠殺する儀式は、午前中のイード・アル=アドハーの祈りを行った後にモスクの庭等で行われる。捧げられた肉は、後に生活に困窮している人々や地元の人たちに配布される。
「イード」はアラビア語で帰還を意味するアダ・ヤウドゥという言葉に由来し、「アドハー」は犠牲を意味するウディヤという言葉に由来する。したがって、イード・アル=アドハーは犠牲へのお返しと解釈できる。イード・アル=アドハーは、イスラム教における犠牲とアッラーへの服従の重要性を反映している。また世界中のイスラム教徒との兄弟愛、他者と分かち合うことを祝う大切な機会でもある。