オランダ植民地時代にバタビア(現ジャカルタ特別州地域)に住んでいた先住民族ブタウィの人々の生活は、近代化の波とともに大きく変化してきたが、独自の文化芸術は今もジャカルタに残っている。
まずは19世紀から発展してきたとされるブタウィの喜劇「レノン」。かつては王室をテーマにした演目が多かったが、時代の流れとともに、日常的なテーマを取り上げた喜劇が中心となった。災難や悪霊を撃退すると信じられてきた約2mの張りぼての人形「オンデルオンデル」は、誰もが知っているブタウィの伝統芸能のひとつ。独立記念日などの公式行事から結婚式まで、あらゆるシーンに登場する。
武術の演舞を含む演劇「パラン・ピントゥ」は、大切な来賓を迎える際の伝統行事のひとつ。鋭利な武器を用いるシラット(武術)の場面では、マラウィ音楽やタンジドール音楽が演奏される。クラリネット、トランペット、トロンボーンなどの管弦楽器で演奏される「タンジドール」は、ブタウィ族の音楽芸術。植民地時代に奴隷が主人に捧げるために演奏した音楽がその起源。現在ではパーティーや結婚式等で演奏されている。ブタウィの「ワヤン・ゴレック」(人形劇)はレノン、ワヤン、ガンバン、クロモンなどを組み合わせたユニークなもの。煙を発する人形や踊る人形があり、見応えがある。