南スマトラ州パレンバン発祥のペンぺック・パレンバンはインドネシアを代表する郷土料理のひとつ。「魚の混合物」を意味するマレー語の「エンペクエンペク」に由来するペンぺックは、16世紀に当時パレンバンに住んでいた中国人によって最初に作られたといわれている。当初は魚のみで作られていたが、その後、鶏卵とエビが入った「Pempek Kapal」、長くて嚙みごたえのある「Pempek lenjer」、魚の皮を生地にした「Pempek kulit」などのバリエーションが生まれた。それぞれ独自の食感と味があるが、どれもペンぺックの本質である魚の風味は強く残されている。通常ペンぺックには砂糖、酢、唐辛子、ニンニク、塩などで作った甘辛いタレ「クコ」が添えられており、甘味、酸味、辛味、うま味を一度に味わうことができる。
生産工程を簡略化する最新の機械があるにもかかわらず、多くのペンペック生産者は依然として伝統的な製造方法を維持している。魚のすり身にサゴ(タピオカ粉)、塩、スパイスを混ぜて生地を作り、油で揚げるという作業を、熟練の職人たちが丁寧に手作業で行っている。パレンバンの人々の文化と誇りの一部であるペンぺック・パレンバンは、パレンバンのお土産として多くの観光客に愛されており、今ではインドネシア全土、さらには海外でも人気がある。