バリ島の伝統的な火葬式「ガベン(Ngaben)」は広く知られているが、バリ島にはガベンが終わった後に行われる「ニェカ(Nyekah)」という伝統儀式も存在する。
ガベンは、地域の人々が行列を成して参加し、皆で敬意を表しながら死者を送り出す火葬式。ヒンドゥー教の哲学的基礎における5つの信条(Panca Sradha)に基づいており、人間の肉体が速やかにその源である五大元素、パンチャマハブータ(地、水、火、風、空)に戻り、死者の魂が創造主と再び一つになるための通過儀式とされている。遺体を灰にするのは、死者の霊を浄化し、残された体をできるだけ早くその起源に戻すためと考えられている。ガベンの根本にあるものは先祖や両親への感謝の気持ちと愛なのである。
ニェカは祖先の魂を五大元素および五大微細要素(パンチャタンマトラ)から解き放つことを目的に行われる。儀式では、女性の名前は花、男性の名前は木の名前に改名される。まずは儀式を行う許可を神に求め、次にパンチャタンマトラの象徴である花形(Puspa Lingga Sarira)を作る。祖先の魂に感謝の供物を捧げ、花形を焼いてパンチャタンマトラを消滅させたら、最後に聖なる川が海に流れ込む地点にて魂を清めてパンチャタンマトラを川に流す儀式で締めくくる。