ジャンビ州の深い森には、独自の文化を守り暮らす先住民族スック・アナック・ダラムがいる。彼らは「スック・リンバ(森の民)」とも呼ばれ、太古の生活様式を今に伝える貴重な存在である。 彼らの起源には諸説あり、ウェッド系民族の子孫とする説のほか、パガルユン王国からの命を果たせず森へ逃れた人々の末裔という伝承も残る。
主な生活の場はジャンビ州と南スマトラ州にまたがるブキッ・ドゥアベラス国立公園周辺で、食料の不足や家族の死などをきっかけに、新しい地へと移動するのが特徴である。 彼らの価値観は「セロコ・アダット」と呼ばれる慣習法に表れている。なかでも「Di mano bumi dipijak di situ langit dijunjung(どこに暮らしても、その土地の慣習を重んじよ)」という格言は、自然や他者と調和して生きる姿勢を象徴している。
スック・アナック・ダラムを語るうえで欠かせないのが、独特の追悼儀式「ブダヤ・メラングン」である。身近な人が亡くなると、悲しみを癒すために住居を離れ、別の土地へ移り住むというものだ。
スック・アナック・ダラムの文化は、自然との共生や共同体の絆、先人の知恵の大切さを伝えてくれる。彼らの存在は、現代社会が見落としがちな価値を思い起こさせるインドネシアの宝である。



















