北スラウェシ、ミナハサ地域には、旅人の冒険心をくすぐる独特の食文化が息づいている。その象徴が「ティクス・エコル・プティ」、通称「カウォック」と呼ばれる森の珍味だ。カウォックは森に生息する白い尾のネズミで、種子や果実だけを食べる。
ウコン、ショウガ、レモングラス、唐辛子といった豊富なスパイスを合わせ、ココナッツミルクでじっくり煮込むのが一般的だ。ほろ苦さのある独特の風味が特徴で、辛味の強いリチャリチャソースで仕上げることも多い。肉質は意外にも繊維が細かく柔らか。ミナハサでは日常食として親しまれるだけでなく、祭礼料理にも欠かせない存在だ。“身体を温め、病にも効く”と信じられており、食文化と民間信仰が結びついた料理でもある。
市場で売られるカウォックは、下処理の段階で 必ず尾を残したまま炙り焼きにされる。これは“家ネズミではない”ことを示すためで、購入者は尾と爪を真っ先に確認する。森ネズミの爪は長く湾曲し、木をつかむための形状をしており、ここが識別の決め手となる。
北スラウェシを旅する際には、このディープな食文化に触れてみるのも一つの楽しみ。あなたはミナハサの伝統料理・カウォックに挑戦してみる勇気があるだろうか。森とともに生きてきた人々の歴史と味わいが、そこには確かに息づいている。




















