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グロドックの「あの世のデパート」 生と死をつなぐ紙の物語

(c) travel.detik.com

ジャカルタ旧市街コタ・トゥアに隣接するグロドック地区には、「あの世のための買い物」ができる不思議な店がある。中国系礼拝用品店「誠友(チェン・ユー)」だ。一見すると線香や供物を扱う一般的な店だが、その奥には死者の世界へ送るための品々が所狭しと並んでいる。

店内には「ライフ・ロータス」や「マハラジャ」といった線香のブランドが並び、さらに奥へ進むと、この店の本領が見えてくる。ウォーキングツアーガイドのアリフ氏によれば、ここは亡くなった人の来世の生活を支える供物を専門に扱う店だという。

衣服や靴、金やバッグなど、並んでいるのは故人が生前に使っていたであろう品々のレプリカ。すべて紙で精巧に作られており、儀式の際に燃やすことで、魂があの世で使えると信じられている。中国系の信仰では、死後も人生は続くと考えられ、遺族は来世での暮らしが豊かになるよう、これらを届けるのだ。

興味深いのは法律への対応だ。インドネシアでは通貨法によりルピアを燃やすことが禁じられているため、紙製の玩具マネーや、なぜかマレーシア・リンギットのレプリカが用いられる。

近年は時代を映し、化粧品やノートパソコン、電子機器のレプリカまで登場した。誠友は、死生観と現代社会が交差する、中国系インドネシア文化の“生きた博物館”なのである。